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賃貸住宅におけるDIY防音計画   

日本全国、住居の音問題を抱えている人はどの位いるのでしょうか?
一戸建て、アパート、マンションと様々な種類の住居がありますが、全体では20パーセントくらいの人が音の問題で悩んでいるのではないでしょうか。(全く根拠無し)
そのなかでも、楽器を演奏する・歌を歌う・音楽を聞く・映画を見る・機械を使う、など音と振動を発生する行為を行う人は、これら音響の問題を自分で引き起こしている事を自覚している為、非常に肩身の狭い思いをし、さらには良心の呵責に苛まれ、さらに進むと自分の中でもう音の問題など無かった事にする、という段階まで到達されているのではないか、と思われます。

さて、インターネット上では様々な情報があり、自分の必要とする情報を的確に得る事が難しいと思います。
「防音室・自作」などで検索すると沢山の事例がヒットします。ですが、やはり自由のきく「持ち家(一戸建て・マンション)」の方の事例が多いかと思います。

私は「一演奏家」として、「賃貸住宅における防音」の経験を書いてみたいと思います。

○何故DIY(自作)で防音をしようと思ったのか
私が初めて本格的に防音室を作ったのはそこそこ昔のことで、有名防音業者様にお願いして6畳間程度の空間に4年ローンで防音室を作りました。
このときに感じた事は「プロの演奏家は自分の練習の為だけに防音室をローンで作ってはいけない」
ということでした。楽しむ事が最重要項目のアマチュアとはまた違う感覚だと思います。
つまり「鮨屋は良いネタを自分で食べてしまってはいけない」という教訓でした。
ちなみに防音効果はかなりのものでした。さすが4年ローン。

次に色々あって軽量鉄筋アパートに住みました。
このアパートに某業者の「1畳半ほどの防音室」を入れました。
この防音室の業者は全く無名です。アパート暮らしという事で、先々の事を考えると高価なヤ○ハや、カ○イなどの有名メーカー製は入れられない状況でした。
このメーカー(メーカーというほどでもない)の防音室は○ルセ○クや、○敏の音楽で有名な○○進氏も使用しています。
この防音室はスペックこそ低かったものの、大変役に立ちました。とはいえ手放しで皆様にお勧め出来るようなものではありません。
私は先々引っ越しのことを考え、この防音室は必要最低限のスペックということで購入しました。
今は私のお弟子さんのところで活躍しています。

また、色々あって今まで住んでいたアパートからほど近い、鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションに住むこととなりました。
引っ越してきて始めに思った事はとにかく静かである、ということ。今までは何だったんでしょう。
このRC造の静かさで思いました。そこまで高額な予算を掛けなくても笛の音ならなんとかなるのでは。
そこで私は、今まで活躍していたこの防音室を私のお弟子さんに譲り、1部屋を笛の吹ける部屋へと改装すべく自分で防音作業をすることにしました。

●部屋の選定
まずどの部屋を防音するか、ですが悩む必要はありませんでした。
二つしか部屋が無いため、選択肢など無いのです・・・

よく防音とは音が全く聞こえない状態にすること、と思われる方が多いのですが、そこまですると莫大な費用が掛かりほぼ実現不可能です。防音室の遮音性能を表す値にDr-○○とあります。これは○○dBカットしますよ、という意味で全く音が聞こえなくなる、または殆ど聞こえない状態にするという訳ではありません。
防音は予算との戦いです。どの箇所にどの程度の対策をするかが重要で、そうしないとあっという間に予算は膨れあがります。さらに過剰な対策は部屋を極端に狭くします。

目指すは絶対に苦情の来ない防音。自分の生活空間に音が漏れることには全く構わないのです。

ということで6畳間のどこをどう対策するか。
この部屋は入って右側の壁が隣の家との境になります。
この右側壁一面はしっかりとした対策が必要です。
入って左、反対側の壁は隣の家と接していないので、そこそこで良いと判断。
部屋に入る側の壁も隣家に接していないのでそこそこで。
天井は上の階に住人がいるのですが、上階の床(コンクリートスラブ)になるためやはりそこそこで良いと判断。
住んでいるのが1階なのと振動が床を伝う楽器では無い為、床への対策は大して必要ないが音の反射があると厄介、と思い床には最低限の処理とすることに。
そして一番の問題はベランダに出る為の窓。ここには工夫が必要だと考えました。

◎資材の検討
さて、重要な音対策に使う資材の検討です。
防音で大切な遮音・吸音・制震のうち、自宅RC造の住宅で最も重要な事は吸音です。
主な吸音材としてはグラスウール・ロックウールがあります。ですがそのまま露出しては使えない為、すべてガラスクロスなどで包まないといけません。ビニールに入ったグラスウール・ロックウールは音を吸わない為不可。
グラスウール・ロックウール全てをガラスクロスで包む作業、しかもその作業を家の中でやらなければいけない。(粉じんなどが舞う可能性がある。触るとちくちくする。外でそんな作業が出来る場所など無い)
そんな作業、家の中でやりたくないなー、という事でネットで探し回った結果ポリエチレン(ポリエステル)のウールが良いのではと思い始めました。
ただし、値段はグラスウール・ロックウールより高価ですし、笛の音に効果があるとは限らない。さらにポリエチレン(ポリエステル)ウールを使ったDIY防音の情報もほとんどありません。

ここは効果も分からずいきなり大量に購入して大量のゴミを出すよりは、まずプロに相談、ということで防音の専門家の所へと相談に行きました。
そこで色々質問した結果、やはりポリエチレン(ポリエステル)ウールが最適であろうという結論になりました。
グラスウール・ロックウールはそのまま使用すると喉がおかしくなったりする人もいるようです。(粉塵は思った以上に恐ろしい・・・)
なお、ウレタンフォームは高額なことと、「音を吸う」ということに関してはそこまでの効果は無いとのことでした。
この後作業する段階になってやはりプロに相談して良かった、としみじみ思います。

そこで相談させていただいた専門家、防音職人様が取り扱っている「吸音特性の違う50㎜と20㎜」2種類のポリエチレンウールを必要枚数計算していただき、自宅へ送っていただくようお願いしました。(丸投げしました。。。)
50㎜ポリエチレンウールのサイズは455㎜×910㎜となっていますが、届いたサイズは910㎜×910㎜の正方形と端数が455㎜×910㎜の1枚でした。
この50㎜ウールは自立する為、サイズが大きいことには非常に助かりました。
20㎜ウールのサイズは1000㎜×2000㎜と非常に大きいです。こちらは触るとフワフワ。
(ちなみに圧力をかけず、通常の状態ですと厚さは30ミリになります)
これらサイズの大きな資材が大量に届いた為、しばらくは途方に暮れ、作業開始後しばらくは家の中が相当狭い状況に。
20ミリウールなど踏みつけて生活していました。(グラスウールは踏んだら大変なことに;><)

◯作業の様子
sizai.jpg
ものすごく場所を取ります。有孔ボード(穴あき合板)はホームセンターで買ってきました。とりあえず置いてあるだけ。カーテンは昔買った東急ハンズの防音カーテンです。以下、見苦しい部分は隠しています。

壁1
作業開始。入って左側の壁には20㎜ウールのみ。
今回は賃貸住宅での防音ということで、壁紙の保護を第一に考えていました。
壁への接着はマスキングテープ(色々な種類のマスキングテープを試したが緑色の車両用マスキングテープが良かった。壁紙が全くの無傷というわけにはいきません。一般塗装用は粘着力が弱すぎる。)を壁に貼り、その上に両面テープを貼って接着しました。
賃貸住宅の壁紙はかなりちゃちく、ちょっとこすっただけでもその部分が剥がれてしまいます。
この20㎜ウールはサイズが大きいため接着作業は比較的楽です。
ただし柔らかく自立しないため、ポイントを押さえた確実な接着をする必要があります。

壁2
20㎜ウールを壁に貼り50㎜ウールを手前に置きました。50㎜ウールは自立する硬さなので縦に重ねても問題無し。一番手前に有孔ボードを置き棚で押さえただけ。ボンドが写っている画像がありますが結局使いませんでした。一般用両面テープで十分接着出来ます。
一応再利用の事も考えて極力接着はしないことに。

壁3
ウールは刃渡りの長いはさみで切れます。何度も切っているとまっすぐ綺麗に切るコツが掴めるように。
一番右の色の違うボードは友人にもらいました。白く塗ろうかと思いましたが面倒なのでそのまま。
一応扉側の壁にも1枚有孔ボードを置きました。有孔ボードは「共鳴」によって音を打ち消すそう。さすが音楽室に使われるだけあります。
天井には両面テープでウールを貼り付けようとしましたが全く無力でした。両面テープもウールも地球の重力の前では為す術無し。急遽作戦を変更、突っ張り棒で支えることに。コーナンでたまたまこの長さの突っ張り棒が安くなっていました。計8本@780円。

この頃は毎日ホームセンターに通ってました。主にカインズとコーナン。カインズは遠い(多摩境)けどカインズPB商品が好きなので家の中はカインズ製品だらけ。
カインズに到着すると、まずカインズキッチンで280円の醤油ラーメンを食べるという儀式があります。これによって安いからとりあえず買っておこう思考を封じ込めます(重要)。おなかが空くと買い物が適当になるので。いつか使うだろう、のいつかは来ないし、使わない物は邪魔になるだけ。

なお、ウールは出来るだけ切らないようにし、切った場合も端材を捨てないようにします(超重要)。上の写真でも天井のウールが足りなくなった場所に端材を詰めています。
また防音のセオリーからは外れますが、多少の隙間は気にしないようにします。DIYなので完璧を求めるといつまでたっても終わりません。

部屋1
天井部分などでウールが足りなくなった為追加購入。突っ張り棒の良いところは天井や壁面のウールを一緒に押さえられるところ。棚の地震対策突っ張り棒がウールを押さえています。
床はタイルカーペットを敷きました(カインズ)。本当はタイルカーペットのままが良いのですが、雰囲気も大切なので畳のような敷物を敷きました。
床に振動が伝わる楽器の場合、床への対策が最も重要だと思われます。Dr-○○は空気伝播音の遮音数値。床への衝撃音はL値で表されます。座布団も買ってきました。(カインズ)

部屋2
有孔ボードは棚で押さえているだけ。手前から有孔ボード・50㎜ウール・20㎜ウールの順に。RC造住宅はコンクリート壁の上に石膏ボードの壁を付け、配線を通したり壁紙を貼ったりしています。石膏ボード単体でもかなりの遮音性能があります。ここでは壁の石膏ボードがそのまま遮音材となっています。
なお、吸音材は遮音材の手前に貼り付ける事が大切。
壁上部はそこまで必要ないと判断。20㎜ウールのみ。

部屋3
扉にも全面に吸音材を貼っています(重要)。再利用するときの為、ウールが重なり合うところはあえてカットしていません。床のタイルカーペットはゴムなので遮音効果はかなりあります。ゴムの厚い防音タイルカーペットもありますが、今回はオーバースペックなので見送り。扉が開くスペースはカットしてあります。

窓
ベランダへ出る窓。50dBカットに成功。有孔ボードに50㎜ウールを貼り取っ手も付けました。取り外せばベランダへ出られます。カーテンは以前から使っていた東急ハンズの防音カーテンに「カインズの防音・遮光カーテン裏地」を。さらに一番手前にはニトリの防音カーテン、同じくカインズの防音・遮光カーテン裏地を。計4重になりかなりの効果が。
ここで重要なのはカーテンレールの上にウールの端材を詰め込むことです。なので端材は捨ててはいけないのです。

■効果の検証
効果の検証をしてみました。
測定はスマホアプリにて行っていますので、精度はそこそこだと思います(アプリによってもほんの僅か数値は異なります)。実際の使用では厳密な数値より、どう聞こえるかという感覚の方が大切だと思いますので、参考にはなるはずです。

○縦軸が音圧ですが、このアプリではマイナス表記となっていますので、-30とあれば70dBです。横軸は周波数帯です。

筒音
能笛(能管)の最低音です。500Hzがピークになっています。なお演奏中の画面はカメラのタイマーで撮影しています。(笛を吹いているのでスクリーンショットは撮れません)

ヒャ
最も使う音。オヒャーのヒャです。1.6-7kHzがピークになっていますが、その他の倍音も高い数値を表しています。このあたりは能の笛における喉の不思議です。

ヒシギ
能笛の最高音、ヒシギです。ヒーヤアーヒーのヒーです。3.5kHz位の非常に高い周波数ですが、やはり複雑な倍音が見られます。

室内
ここからはどのオクターブ帯域においても音の大きさが同じであるため、音響測定に用いられるピンクノイズをスピーカーから出力し測定しました。スマホのスクリーンショットです。
なお生活音や車の走行音の少ない深夜に測定したため、70dB弱程度で測定しています(それでも相当大きな音でした)。
200Hzから16kHz位までほぼフラットな音圧です。

扉外
入り口扉を閉めて扉の近くで測定。扉に20㎜ウールを貼り付けただけ。
200Hz以上の周波数帯が右肩下がりになっています。なお人間の耳では音が小さくなったな、位に感じます。なのでこの位置では普通に聞こえています。数値で見るとこんなに減少していたとは!!

隣部屋
隣の部屋です。扉は隣の防音を施した部屋の扉のみ。この部屋の入り口には扉がありません(外してある)。
部屋を作る仕切りの向こう側です。
これを見るといかに扉からの音漏れが大きいか分かります。恐らく部屋を仕切る石膏ボード2枚の効果でしょう。
もう耳障りな音量では無くなっています。しかし200Hz以下の低音への効果が弱いです。低音を出す楽器ではそれ相当の対処が求められるでしょう。

ベランダ
ベランダへ出て窓の近くで測定。車の走行が少ない瞬間を狙いスクリーンショットを取りました(多少は車の走行音あり)。何枚かスクリーンショットを取ったのですが500Hz以下の低音がかなり測定されました。ウールと防音カーテンは500Hz以上の音を止めているようです。

以上の結果から見えることは、遮音材に当たる壁や扉に貼り付けただけのポリエチレンウールが500Hz以上の音を確実に吸っているという事です。500Hz以下の低音には面密度の高い遮音材そして制震材が必要でしょう。
ポリエチレン(ポリエステル)ウールはまだネットで探しても殆ど情報の出てこない資材ですが、確実に効果があることがわかります。とにかく扱いに神経を使うこともなく、洋服と同じ繊維のためフワフワで触り心地もよい繊維の板なのですが、正直ここまで効果があるとは。

※改めてポリエチレン(ポリエステル)ウールの効果を感じました。数値を見ると感覚以上に減少していることがわかります。

もう一つ驚いた事は、一昔前なら何万円もする高価な音響測定器を買わないと調べられなかった音の測定が、スマホアプリでだれでも簡単に調べられる事。もちろん精密な数値は出ませんが、そんなに精密な数値を取る必要もありません。

私もそうでしたが、まず音のプロに相談をすることをお勧めします。
様々な経験からベストな解決策を提案して下さるはずです。
ちなみに私は音を出す方の専門家で止める方は専門ではありません。。。

◆最後に
楽器の演奏をする人、歌を歌う人、音楽に携わる人は自分が出す音に苦しめられる、という矛盾した状態に陥るかと思います。
しかしその部分を打開すべく住宅の構造特性と、そこに最も相性の良い資材の組み合わせにて、安価で必要十分な効果を得ることも可能であると思い自作での防音計画を開始しました。最も本格的な防音室、とまでは行きませんが現時点にては必要にして十分です。(深夜演奏可)
通常最も一般的な音対策資材であるグラスウールやロックウールなど安価ではあるが、取り扱いに注意が必要な資材が真っ先に検討されるかと思います。しかしポリエチレンウールのように取り扱いに大した注意もいらず、加工も簡単で非常に効果の高い資材も出てきました。
このような資材でのレポートは殆ど無い状態ですので、今回実体験を載せてみました。
木造、又は軽量鉄筋住宅にお住まいの方は違った対策が必要だと思われます。
大切なことは必要な場所に必要なだけ対処をすること。
大手メーカーのユニット防音室の様に均一な性能を求めれば、予算は跳ね上がり部屋は狭くなります。
必要最小限の防音をDIYで、というコンセプトでの「一演奏家の記録」が参考になれば幸いです。
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